プロフィール 2008年に株式会社エウレカを設立し、代表取締役CEOに就任。2012年にリリースした、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」は、日本・台湾・韓国で700万人以上が利用する規模に成長。2014年に、カップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」をリリースし、400万ダウンロードを突破している。2015年5月、M&Aにより、Match、Tinder、Vimeoなどの有力インターネットサービスを有する米InterActiveCorp(IAC)へ事業売却。2017年10月、同社取締役顧問を退任。現在、エンジェル投資家として国内外のスタートアップを支援・サポートしている。

幼稚園の頃からインターネットがあるのが当たり前の環境

赤坂さんのインターネットとの出会いはいつですか?

元々父が建築パースで、新しいビルを竣工する計画段階のタイミングで建築予定地の未来図を3DのCGの絵に落とす仕事をしていた関係で、生まれる前から最新のアップルIIが自宅にあり、日常生活にインターネットがあるのが当たり前でした。幼少期の遊びはファミコンなどではなく専らMacに入っているテトリスで、そのせいでfinderを開いてゲームにたどり着くまでのフォルダ構造やショートカットなどを幼稚園の年長くらいから把握していました。

中学生になり部活に入ってからは一度インターネットから遠ざかってしまいましたが、高校生になるとP2Pの音楽/ビデオダウンロードやMicrosoftのMessengerが出始め、友人との連絡がメッセージベースになってからは、再び自然とネットリテラシーが上がっていきましたね。

一方で、大学附属の高校に在籍していたにも関わらず、アパレルの専門学校に進学してもいいかなと考えるくらい服飾が好きでした。ただ当時はアルバイトもろくにしてなかったので、月に使えるお金が5万円くらい。そのお金の使い道をひたすら考えていました。当時ヘア雑誌のCHOKICHOKIというものがあって、その中に“キング”と呼ばれるおしゃれな人たちがいて、彼らが誌面で着た服が必ず値上がりするところに目をつけて、毎号その雑誌が出ると同時に彼らが着ている服を仕入れ、ヤフオクで転売していました。いわゆる「せどり」と呼ばれるビジネスですね。購入価格5,000円ほどの服が2〜3万円で当たり前のように売れ、大体月に20万円くらい稼いでいたと思います。

もう一歩踏み込もうと思い、大学2~3年生の頃にはデザイナーズ系ブランドの服を店舗で買ってはヤフオク上で転売をしていました。最初は個人の名前でやっていましたが、ヤフオク上にショップを作り、計画的に仕入れて販売をしていました。

今思えば、当時は服が好きだと思い込んでいましたが、実はどちらかと言うと仕入れたものが売れる過程、つまり流通そのものに興味があったんだと思います。

起業するための投資として就職を選ぶ

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そこから服飾系の企業の内定を辞退したそうですが、なぜでしょうか?

当時はアパレルが好きだと思い込んでいたので、イッセイミヤケのグループ会社のエイ・ネットという会社に内定をいただいていたのですが、スピード感や勢いがあまり感じられなかったんです。当時ヤフオクで転売をしていて、既にインターネットが当たり前の生活をしていた僕としては、生産管理用の大きなデスクトップPCがオフィスの島に1つあるくらいの環境にうっすらと危機感を抱いていました。

そんな折、当時サイバーエージェントの内定者だった友人に、社長の藤田さんの「渋谷ではたらく社長の告白」という本を薦められて読み始めると、これが本当に面白くて。読み終えて、やっぱりインターネットじゃないとダメだなと思い直しました。アパレルというよりは物が売れる一連の流通プロセスそのものに興味があって、「インターネット最高!」という元々の想いと繋がり、そのまま内定を辞退したのが大学4年生の冬、つまり入社直前のことでした。

なるほど、ではその頃からすでに起業は考えていたのですか?

もちろん自分で会社をやる前提でしたが、とは言っても当時はただの大学4年生で、 営業経験もなく、名刺を持ったのも初めてくらいだったので全く自信もなく、このままでは成功出来ないと思っていました。なので2年間を投資期間として、経営に必要な要素を全部インプットすればいいかなと考えたんです。
特に藤田さんの本で印象に残ってるのが「今から車の部品工場を作って勝てると思いますか?レッドオーシャンでキャリアを積んできたベテランの人たちが沢山いる市場に参入しては勝てないけど、インターネットにはそうした玄人がいないんですよ。みんな素人で一斉スタートなんだから努力量で勝てます」といったような内容のところ。それを真に受けた僕は「おじさんたちと勝負しなくていいんだったらいけるな」という漠然とした自信だけは持っていました。 

時間投資で勝負が決まる

新卒時代には早くから新規事業を任されたそうですが、どういう風に結果を残されたのですか?

イマージュ・ネットというアパレル通販会社に修行の腹づもりで就職しました。 当時は社員45人ほどのうち約半数がエンジニアのような会社で、僕は営業職だったにもかかわらず基本的にはコミュ症という感じの性格で。人と話すのも、名刺交換やアイスブレイクも苦手だったので、初動ではコミュ力の高い同期に負けていて、最初はかなり辛かったですね。ただそれでも半年ぐらい右往左往していると営業にも慣れてくるもので、そこからはとにかく時間投資による努力量で勝とうと考えていました。

例えば同僚や先輩からランチに誘われても、「お昼抜いてます」などと理由をつけてやんわり断っていました。周りがランチをしている1時間にもひたすら仕事をしていれば、勝てるだろうと。社内の飲み会に誘われても、一人だけ社外の飲み会に行ったりしていました。 なので営業トップになれたのはセンスというよりは、時間投資によるものだと思います。

共同創業者は一緒に働いた人を選ぶ

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当時、上司だった西川さんとその後一緒に長く会社経営をされてきましたが、赤坂さんが思う良い共同創業者の探し方や見極め方を教えてください

一番重要なのは一緒に働いたことがあるかどうかだと思います。気心知れた友達などという、友達としての仲の良し悪しは正直どうでもいい。 なぜなら商売である以上はビジネスは戦争で、相方選びの基準は、戦力があるかどうかが大事になります。そしてそれは、一緒に働いて優秀かどうかでしか見極められないと僕は思っています。

そこにあくまでも補足的な要素として、その人との相性があると思います。前提として相方同士がお互いにそれぞれの能力を戦力として使えると思っているかどうかが重要で、後は二人でいるからこそ化学反応が起きて結果を出せる。そういう関係であることが重要なので、やっぱり共同創業者探しは、 同じ会社でなくとも取引先でもいいので、一緒に働いた経験があるかどうかが大事だと思っています。

それでもタイミングの問題もあるし、その相方が玉になってくれるかどうかの判断は難しいと思うが適切な口説き方は?

西川さんに関しては、前職で新規事業を一緒に進める中で、2人でミーティングをしたり食事をしたりする機会が増え、ああでもないこうでもないと議論をしては煮詰まって飲みに行く、の繰り返しでした。そんな時にVasilyの金山さんと出会ったのがきっかけになりました。イマージュの会長の紹介で会ったのですが、当時「iQON」というサービスを金山さんが考えているタイミングでした。

色々な話を聞いたその帰り道に、西川さんとカフェでコーヒーを飲みながら、「金山さんのようなイケてる人が、イケてるサービスを爆速でやろうとしているのを目の当たりにして純粋に悔しいね」という話になったんですよね。「自分たちも、これだ!と思えるビジネスアイデアを見つけたら、自分たち自身でやってやるくらいの気概がないといけないね」と。

それから、1か月で200案ぐらいのビジネスアイデアを出して、その中から1つ決めて取り組んで、ダメだったらまた次をやろうという考えのもとスタートしました。そこで最初にスタートさせたのがデザイン制作のクラウドソーシング型サービス「MILLION DESIGNS(ミリオンズデザイン)」でした。

創業初期は、”石橋を叩いて渡る”姿勢で受託と新規事業を両立

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2012年に「Pairs(ペアーズ)」を作るまでに、受託をしながら会社運営をしていたそうですが、受託と新規事業のバランスはどうされてましたか?

まず、Pairsを作るまでに、3つのサービスを潰しているんです。 その間に受託をしていたのは簡単に言えば、とにかくビビリで石橋を叩いて渡るタイプだったからだと思います。当時、会社なんてすぐに潰れるものだと思っていたので、新規事業をやっても余るほどの十分な現預金があって、キャッシュフローが回っている状態をキープしながら最低限のリスクでやりたかったんですよね。 受託だけで年間7〜8億円の売上と、月ベースで粗利3,000万円くらいはあったので、立ち上げ初期のタイミングで2,000〜3,000万円の予算を見積もっても、受託で単月回収できるくらいのバランス感で運営していました。

人のモチベーション管理のところでいうと、受託チームには「あなたたちは今を支える役目」、新規事業のチームには「あなたたちは未来をつくる役目」と明確に伝えていましたね。未来を作れたら、既存の人たちは未来へ吸収をして、またさらなる未来を作っていくという、その繰り返しが会社なんだよという説明を直接していました。 受託は既に仕様が決まってる一方で、新規事業は答えがない中で一度作ったものをPDCA 回して、違ったらまた別のものを0→1で作らなければいけないもの。そして、そのサイクルを高速回転させなきゃいけないし、開発の工数も多く取られますよね。

受託に関しては色々な意見があると思いますが、当時の僕の認識では受託は「できる」と思っていて、「どちらの難易度が高いか?」と言われれば明らかに新規事業の方。なので、既存事業である受託へのアサインに不満を抱くメンバーに対しても、誰をなぜ新規事業にアサインしたかという点を含めてしっかりと説明するようにしていましたね。

うまくいかない時期に会社のモメンタムが下がることはありませんでしたか?

かなりリスクヘッジを取っていたので、そもそも会社のモメンタムが弱まるということは特になかったです。全然怪我をすることはなかったので、そういった意味では怪我には弱いかもしれませんね。 エンジェル投資をしていると、「あと数ヶ月でキャッシュアウトする」という相談も来ます。当時の僕の感覚で言えば信じられませんよね。使わなければお金はなくならないし、「もっと計画的に資金調達をできたのでは?」とも思うわけです。

ただ、周囲の方々や投資先の会社がリスクを取ってチャレンジをしているところを見るにつれて、最近になってようやく、ちょうどいい感じでリスクを取ろうと思えるようになってきましたね。なので、次に自分でまた事業をやるなら資金調達はしていいかなと思いますし、もっと踏み込んで大きくリスクを取ってもいいのかなと。

需要のないものをつくるな

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数々の新規事業を立ち上げられてますが、Pairsとうまくいかなかったサービスとの違いは?

やっぱり、その時その時代にニーズがあるかないかの違いに尽きると思います。 過去に作った「Pickie (ピッキィ)」や「MILLION DESIGNS」ではその部分を理解できていなかったなと感じています。今思えばそれらのサービスが無くて困ったことが、当時の自分自身一度もなかったんですよね。「Pickie」に関して言えば、当時「AppBank」のようなメディアが流行っていたのでありだと思っていましたが、今振り返れば、結局インターネット業界に浸りきった人間のエゴイズムで作られた、需要のないものでしかなかったと思います。

「Pairs」の場合、基本的には人間は異性に興味を持つものであり、「恋人がいない人は恋人が欲しい」という明確なニーズがあって、当時出会い系サイトと呼ばれるものが、サクラや広告で成り立っていた不健全なサービスであったにも関わらず、依然として多く人々がそこに価値を感じてお金が使っていた状況を見て、ビジネスモデルとしてその健全化を徹底的に行うことでリプレイスのしがいがある領域だなと思いましたね。

「MILLION DESIGNS」でいえば、需要は明確にあったと思うんです。ただクラウドソーシングは市場形成に10年ほどはかかる市場だと感じました。ランサーズやクラウドワークスがひとつずつ積み重ねていってやっと市場ができてきましたよね。もしも僕も10年諦めずに頑張れていたら、チャンスがあったかもしれないです。笑

そもそもPairsの着想はどうやって生まれたんですか?

当時、オンラインデーティングサービスはアメリカで既に当然のように存在していて、 「Tinder(ティンダー)」はまだありませんでしたが、 「AYI(Are you interested?)」や「Zoosk(ズースク)」などが人気を集めていました。デーティングサービスの中でも「Match.com」のように、登録したらまずプロフィールページを自分で入力するサービスを第1世代とすると、Facebook連携でログインしてプロフィールが自動で生成される第2世代のサービスが出てきているような状況でしたね。

当時はFacebookの検索窓に「Zoosk」などサービス名を入力すると、「 何万人が利用しています」 というような表示が出ていました。それを1ヶ月間ぐらい定点観測して、最初のうちは10万人くらいだったのが、4ヶ月後には100万人に増えているのを見て、こんなに急速に伸びているのかと。当時、FacebookではBadooというスパムが出回るなど、需要があって伸びてはいる一方でクリーンな環境とは言えない段階でした。しかも日本ではオンラインデーティングサービス領域でのサービスがまだ出ていなかったので、日本での展開はありだなというのは昔から感じていました。 受託でFacebookアプリの制作を数多く手がけていたこともあり、Facebookマーケティングの知見がある程度あったので、そういった動向も常に追うことができていたんです。

そうこうしているうちに国内では「Omiai(オミアイ)」が「Pairs」よりも先にリリースされました。少し様子を見て彼らが公表するKPIなどを聞きながら自分たちのFacebookマーケティングのノウハウを生かせばいけるなと考えていました。

海外企業へのExitに再現性はある

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海外企業にExitしているケースは稀だと思いますが、今の日本のスタートアップにも再現性はあると思いますか?

再現性はあると思います。 エウレカの場合は、同じ分野のサービスを海外でやっている会社が、たまたまグローバルで積極的に買収を推し進めるチームだったということが大きいです。 「Match.com」や「Tinder」、「OkCupid」、「POF(Plenty of fish)」などのサービスがあり、中でも当時はMatch.comがフランス発ヨーロッパ最大の「Meetic」というサービスを買収し、Match Group Europeを設立してユーロチームを結成して、さらにはベルギーや中国のサービスも買収をしていました。次に彼らがおそらくほぼ確実にアジアに目を向けるであろうことは明白で、特に中国でうまくハンドリングできず苦戦している背景もあって、アジアを強化したがっていました。

再現性というところでは、海外企業の動向や文脈を理解できれば、計画的な起業や売却ができるのではないかと思いますね。文脈さえハマれば。

「Omiai」と競合していた時期を越え、国内にさらなる競合がいない状況で、目線は必然的に海外に移りました。当時「Zoosk」の売上規模は、およそ年間120億円ぐらいだったように記憶しています。単月10億円ほどの規模であれば、当時の自社売上を考えても問題なく越えていけると思いました。そこでまずは「Zoosk」を目先の目標に設定しました。そこで「Match.com」、「Tinder」、「OkCupid」など米系の競合を改めて調べてみると、親会社が同じInterActiveCorp(IAC)という会社だということに気付きました。もちろん最初は売却ありきではなく競合として見ていただけなのですが、売却検討時に国内の企業にはもちろん声をかけつつも、アメリカのIAC傘下のMatch Groupにもアプローチしてみたんです。結果、Match Groupはエウレカにアジア市場での展開を期待していて、エウレカとしても彼らの資本とノウハウを使って国内のみならずアジアでより大きく展開していきたいという考えが合致したという感じです。

エンジェル投資を始めたのは、スタートアップエコシステムに貢献するため

赤坂さんがエンジェル投資をする目的を教えてください

そもそも会社を売却する前に1社だけ投資をしていました。売却後は純粋に売却益の使い道として、インターネットのスタートアップエコシステムに貢献するのは果たすべき役割だと思ったので、自然な流れで投資をはじめました。

売却をしてから、さまざまな企業の社長さんと会う機会が増えたんですよね。グリーの田中さんやセプテーニの佐藤さんらとお会いして会話をするなかで、自分はこの人たちに憧れてこの業界に飛び込んだんだなと思うと、次は自分も誰かのきっかけにならなきゃならない、それこそエコシステムに貢献しなくちゃならないと強く感じました。 10年後、僕が投資している今の若い起業家がExitして、さらに彼らが次の世代に投資をしていくことを繰り返す。そうして日本のスタートアップのエコシステムが強化されていく必要があります。 アメリカではそれが既に6〜7周しているから今の巨大な投資規模になっているわけで。一方、日本はまだ2周ぐらいで、投資実行の規模感がアメリカに比べて小さいのは当たり前ですよね。 とはいえ確かな感覚として、1周目より2周目の今の方が、資金調達環境は非常に良くなっているのは間違いないです。これが3周目、4周目となっていけば規模もどんどん大きくなるはずなので、その一端をしっかりと担いたいと考えています。

また、事業という観点では、僕自身が知らないことを学ばせてもらうために投資する、という文脈もありますね。例えば、不動産業界のことをよく知らないからもっと知りたいし、ヘリコプター市場のことを知らないから知りたい。今の起業家はみんな本当に頭がいいので、こちらが勉強になることの方が正直多いんですよね。経験者だから知っていることはその経験談から色々語れるのでwin-winだなと思ってます。 なので、基本的には起業家に会ってドヤ顔で喋るために投資をしているわけでは全くありません。「投資をさせてもらっていいですか?」という心持ちですね。それくらい会社の株を渡すということはとても重要なことなので。

メッセンジャーでの依頼が多いと思いますが、この起業家は会いたいなと思う基準はありますか?

一つは領域と市場選択がしっかりと書いてあること。 どういう温度感や目線でその市場を見ているのかを教えてもらった上で、成長性が見込めて、これから夜明けになっていくような市場なら可能性を感じますよね。

もう一つは、その人がイケてそうか。もちろんメッセではほとんど分からない場合が多いですけど、その人の背景などを聞いてイケてそうだと感じられる人であれば、あとは市場選択との掛け算で成功可能性が見込めるので、会おうと思います。

イケている人であっても、市場性がなかったり、その市場をどれだけ掘っても人類が価値ある前進をするほどではなかったり、そういった可能性があまり感じられないものはお断りします。

自らのユーザー体験を元に投資する

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全く知らない業界や領域のプロダクトって判断が難しいと思うのですが、どう判断していますか?

例えば、投資先の一つにヘリコプターのシェアリングサービスがあります。そのきっかけは、僕自身が香港からマカオへ移動する際に、一度ヘリを使ったことがあって、時間の大幅な節約ができるし、騒音はそれなりにするけれど機体の揺れがほとんどないし、ヘリ最高!と思った経験なんです。全く知らなかった領域でも、自分自身が良かったと体験していたから投資をしようと決めました。 さらにいえば、僕は飲食店予約代行アプリ「ペコッター」を愛用していて、レストラン予約なんて昔は電話予約だったのが、徐々にネットで予約できるようになって、でもまだそれでも不便な状態だったのが、「ペコッター」がチャット予約を実現することで見事に解決されている。その旅行版があってもいいと思うし、こういった面倒くさいことを丸投げできるようなサービスや会社には投資したいなと思います。 そんな風に自分自身のユーザー体験が背景にある文脈での投資は多いかもしれません。

これはマネタイズできないなと思うサービスでも投資をしますか?

それはあまりないですかね。 ただ、これめちゃくちゃマネタイズが難しいな…と思う企業はいくつかありました。 そういう会社の投資は最後まで渋りましたし、それでも投資をしたのは、めちゃくちゃ赤字を掘ってでも、やろうとしている世界が実現できたら圧倒的に便利になるなと思えるサービスだったからです。「ぜひ頑張ってやってください!」という応援の意味で投資をしていて、フォローオンは出せないかもしれないけど、少し出しますというところはあります。 でも意外とそういう会社が、2ラウンド目、3ラウンド目と順調に進んでいて10億円といった規模のバリュエーションまでいっていたりしていますよ。

会った後に断る場合の共通点はありますか?

ありますね。 そもそもビジネスモデルに懐疑的な時は、お断りすることが多いかもしれないです。 あとは、プロダクトが作れないチームには投資はしないかな。 基本的には起業家を尊敬しているのでバリュエーションを値切るようなことはしませんが、「ただ純粋にプロダクト作りに時間がかかるのに、シードで3億円などの高いバリュエーションで調達して、1年後、次のラウンドに進める設計はできてるの?」とははっきり言いますし、よっぽど危険な時は、初回調達時のバリュエーションを下げる提案はしたりします。基本的にはシードが圧倒的に多いですが、それ以上のシリーズでも5,000万円ぐらい出すことも場合によってはあります。事業領域に偏りなく、今は約30社くらい投資をしているような状況です。

シリーズA、Bでもフォローオンする場合はありますか?

あります。フォローオンをする場合は、もちろんある程度「この人、この事業いけるな」という確信が欲しいです。ただ僕のようなエンジェル投資家は100億円規模の投資余力があるわけではないので、できればシードからアドバイスをして、資金力のあるVCに繋ぐという方が良いかなと思ってます。

他のエンジェル投資家に繋ぐ場合もあって、サービススケールにおいてSEOが重要なサービスであれば、その領域に強い人を紹介しますし、BtoBであればそういう人、女性向けコマース分野であれば、それに強い人と繋いであげる。そういう、足りないパーツを埋めてもらえれば、成功可能性がグッと上がると思える場合、積極的に紹介をしていきますし、共同投資を持ちかけたりもします。 当然ですがシードの起業家は、調達に時間なんて割いていられないはず。そこでのエンジェル投資家の資金やフットワークの軽さは貴重だと思います。

起業家であり続けることが、最高のエンジェル投資家

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投資家側が選ばれる時代になり、長い目ではVCだけでなくエンジェルも選ばれる立場になると思いますが、その時の赤坂さんの強みは何でしょうか?

確かにエンジェルもVCも選ばれる時代です。実際に、以前よりもVCはすでにかなり選ばれるようになってきていると感じます。 今や1年2年でガラッと状況が変わってしまう世界なので、常に最前線でプレイをしながら、その結果で以ってPDCAを回し続けて、生の情報を得ているような人こそ最高のアドバイスができると思うので、エンジェルサイドにずっと居続けることはリスクだとは思ってます。 自分が起業家として、実体験で成功/失敗したことを共有できることが理想だと思います。これはプロダクト作り、マーケティング、組織作り、バックオフィスにおいてもそう。例えば「勤怠管理にはどういうサービスを導入していますか」と聞かれた時に、 3年前のトレンドを教えてもしょうがないじゃないですか。

一方で投資家の中でも、投資先の株を10〜15%持って、投資先にコミットをして採用からマーケティングまでガッツリ手を動かしまくってるような投資家であれば、フレッシュな情報を多く話せると思いますが、僕はそういうタイプにはなれないし、ずっと投資家サイドのみにいるつもりはないです。

成長するためには、自分の意見を持つこと

経営者が気を付けないといけないと思うのは、自分自身での意思決定をする回数が減れば減るほど成長しないという事です。なんでも相談をしてしまって自分で考えるのを怠ると思考停止してしまいます。自分自身で熟考をして、「こういう意思決定をしたんですけどどう思いますか?」というくらいしっかり内部で議論した後に意見を求める方がいいと思う。それは自分が社員に求めることと同じで、まず自分で考えた結果を持ってきて欲しい。どちらのクリエイティブがいいと思うかではなくて、自分のオピニオンを持ってきて欲しいという事です。投資家の意見を全部かき集めて判断したいというのはもちろん分かりますが、まず自分の意見を持ってきて欲しいですよね。

とはいえ大前提として、素直な人は好きなんです。 例えば、KPI管理やレポートがしっかりエクセルで管理されてても、それって誰も見ないので「簡易な因数分解に直してそのキャプチャなんかをベタ張りして送る方が見やすいしコメントもらえると思うよ!」とか、そういうアドバイスをした時に素直に実行できる方には言い甲斐があるので言おうと思いますよね。もちろんそれは本人がその方がいいと思ってくれたからだと思いますが。意見を持っていて欲しいけど素直であって欲しいという、ある側面では矛盾しているその2つの要素のバランスがとれている人はすごくいいと思いますね。

相性がいいなと感じる投資先はどういうところですか?

定量と定性のバランスが取れている経営者の方がスタートアップはうまくいくと思うので、どちらかに偏っているなという人の方が、僕はうまくアドバイスできてコミュニケーションが取りやすいので、相性がいいんじゃないかと思います。 あとはマッチング系のサービスをやっている人かなぁ。

大事なのは全体のユーザー体験

エウレカは受託もやっていたこともあり、デザインやユーザー体験が得意だと思いますが、この分野でアドバイスすることはありますか?

めちゃくちゃありますね。 デザインって点で直していてはダメで、プロダクト全体としてのユーザー体験を作る中で修正していく必要があると思います。 例えば、旅館に泊まった時に、その旅館にもう一度泊まりたくなる理由には、「アクセスが良かった」「景色が良かった」「部屋が清潔だった」「お料理が美味しかった」「担当して頂いた仲居さんのホスピタリティが良かった」など色々考えられます。さまざまな要素が組み合わさって一つのユーザー体験が作り出されているんですよね。これはどんなサービスにおいても同じで、一箇所をピンポイントで直しても意味はなく、プロダクト全体のユーザー体験を意識しながら継続的に修正して、アップデートしなくてはならないです。体験のフィードバックを客観性を持って戻す事を、僕は一番大事にしています。 実際、投資先のユーザーテストを被験者として結構やっていて、自分が使うところを動画で撮ってもらって、その上でかなり細かいフィードバックをする時もありますし、体験としてよく設計されたアプリをいくつか教えてあげて、修正点をあぶり出すみたいな壁打ちもやる事があります。

重要なのは自分が感動できるかどうか、そのための挑戦

次の起業はされますか?今後の目標などがあれば教えてください

次の起業がラストになるのかとかは全く分かりませんし、とにかく行けるところまでは行きたいと思います。 それがどのレベルかと言われると難しいですが、スポーツブランドで言えばナイキがトップで、次にadidas、PUMA、アンダーアーマーと続いてますよね。アンダーアーマーの歴史なんて20年やそこらなのに、50年や100年やっているようなナイキやadidasに迫っていっているわけです。レガシーな既存産業にもまだまだ参入余地はあると思います。

時価総額が何千億、何兆円という、そういった規模の挑戦をしてみたいとは思います。グローバルでなければいけないなどのこだわりは全くないのですが、次に日本でNo.1になって「感動」できるのかどうかという観点です。 1,000億円規模だと、周囲の近い人たちがすでにそのレベルに到達している以上、なんだか感動できないんじゃないかと思うんですよね。見たことのない景色を見たいという意味では、 どんどんハードル上がっているのでやばい気がします(笑)

そういう点では最終的に上場企業を目指すという可能性もありますか?

ありえるかもしれません。むしろM&Aは経験したので、とにかくまだやったことのないことに興味がありますね。純粋に楽しそうだなと。そういった意味では、非インターネット領域も楽しそうですよね。テレビを作るのも、家を建てるのにもインターネットが絡んでくるのは当たり前で、もはやインターネットがなくなることなんてこの先絶対にないので、非インターネット領域を攻めたとしてもインターネットという強みで勝てると思います。 最近アイデアのブレストをよくしますが、理想の世界を技術面のハードルを一切なしにして思い描くととても面白いんですよね。ロンT一枚で北海道に行きたいから温度調整ができる服がないのかとか、ハゲをこの世から無くせないかとか。(笑) そういう成し遂げたい未来の逆算から事業を考えるのは楽しいですし、どんどんチャレンジしていきたいなと思います。

最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします