プロフィール 慶應SFC卒業後 ユニリーバ・ジャパンを経て、2007年にコーチ・ユナイテッドを創業。
2013年に同社の全株式をクックパッドへ売却。2015年にTokyo Founders Fundを共同設立 米国シリコンバレーのスタートアップへの出資等、エンジェル投資も行う。
投資先はマネーフォワード(東証マザーズに上場)、ママリ(KDDIが買収)、AnyPay等、約45社

大学在学中に19歳で起業、尖っていた学生時代

金子陽三さん(現ユナイテッド社長)と学生時代に起業していますが、どのように知り合ったんですか?

当時、僕は大学一年生で、今よりもかなり尖っていました。とにかく勝負したい、もっと何か自分はできるはずだ、とイキってるやつでした。色々なゼミやサークルに首を突っ込んでいたのですが、その中でも、金融工学を先行している大学院生たちが主催している株式投資クラブというサークルに最初の夏休みに入る前くらいの時に友達に誘ってもらいました。

20人くらいでお金を出しあって、上場企業の成長性をあーだこーだと議論しながら投資をするというのが主な活動で、今で言うと・・・漫画の「インベスターZ」の投資部のサークル版みたいな感じでしょうか。当時はちょうどスカパーが上場するタイミングで、そのブックビルディングに応募してみる、とか、決して大きくない軍資金でしたが、サークルとしては楽しく投資してました。

そこの先輩が「慶応SFCの卒業生で、シリコンバレーのドレイパーっていうVCにいた面白い人が日本に帰ってくるから、会ってみない?」と紹介を受けたのが、金子さんでした。会ってみたら、すごく話が合って意気投合して、その次に会った時には「一緒に会社を作りましょう」とガッチリ握手していました。

最初から事業アイデアは固まってたんですか?

その時はまだ特定の事業アイデアがあった訳ではなくて、どちらかと言えば、事業領域とビジョンだけがキッチリあったという感じです。とりあえず起業家支援がしたい、日本にシリコンバレーのような起業のエコシステムを構築したいという方向性だけは決まっていました。じゃあ、具体的に何をしようか、というところから一緒に話をしていました。当時、僕が19歳で、金子さんは26歳、もう一人、京セラ出身でイリジウムの開発をしていた凄腕エンジニア27歳、の3人で共同創業者として起業しました。会社名の「アップステアーズ」は思いつきで僕が名付けました。

金子さんはなぜ有安さんと一緒にやろうと思ったのでしょう?

よく19歳と組みましたよね(笑)。今、振り返ると、ただ生意気だけのチンチクリンの学生だったのですが、当時は「いや、別に年齢とか関係ないですよね?」とか自分から言ってしまうような感じでした。金子さんが、こういう事業やりたいんだよねって言っているのに対して、「それって、公益性が高いし短期的に儲からないから営利企業じゃなくてNPOでいいですよね?」とか、本当に偉そうなこと言ってましたね。金子さんが大人で、懐が広かったので抜擢してくれたんだと思います。ダイナミズムある起業の世界に若い僕を引き込んでくれた金子さんには、本当に感謝しています。

実際、事業開発はどうでしたか?

事業を創るというのがいかに難しいかを知りました。今でこそ、PMF(Product Market Fit)がどーだとか、ユーザ獲得モデルの検証をどうするかとか、Customer Development(顧客開発)の方法論はだいぶテンプレート化されてきましたが、当時はそういったものは整備されていなかった。なので、無駄な議論や調査を非常にたくさんやってしまったという記憶があります。紆余曲折を経て、今で言うシードアクセラレーターのような事業をローンチして、「クロスコープ」というシェアオフィスのブランドで100社以上が入居、シード投資も実行していましたが、それは自分が作りあげた事業ではなく、金子さんのリーダーシップによるものでした。当時は、今のようにVCやエンジェルも多くなく、シェアオフィスも少なく、資本金も1000万円が必要な時代だったので、社会に必要とされていた事業でした。その会社は、その後、当時のネットエイジ社に全株式を売却し、金子さんはそのままネットエイジ社の経営メンバーに参画します。ネットエイジは何度か社名を変えてユナイテッドとなり、10数年後の今、気づいたら金子さんはユナイテッドの社長になっていました。今でも、ちょくちょく金子さんとはご飯食べに行くのですが、「あれからもう15年も経つけど・・・・まだまだ、これからが勝負ですな!」という話をよくしています。

就職する道を選び、再び起業の道へ。ユーザーインサイトの重要性に気付く

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大学卒業後、ユニリーバへ就職されていますよね

はい。新卒で外資系の消費財メーカーへ入社しました。その時の一番強い気持ちが「マーケティングのプロになりたい!」「外国人に囲まれて仕事をしてみたい!」とかの憧れだったんですよね。色々調べると、マーケティングを学ぶには消費財メーカーが一番良いらしい。消費財メーカーの中でも外資系が良いらしい。ということがわかって、外資系企業のマーケティング職を選びました。もしも、その時にリスクをとれるような事業のネタがあったら、就職するか悩んだと思うのですが、特にネタもなかったので、気軽な気持ちで一旦就職してみました。

どんな仕事だったんですか?

「マーケティング」と言っても、文脈によって指す内容は様々で、大きく分けると、消費者調査、プロダクト開発、広告開発、の3つです。この3つを一気通貫で経験することができるのが外資系消費材マーケの醍醐味なんですが、とても良かったです。特に、ユニリーバのユーザー理解のフレームワークは非常に洗練されていて感動しました。消費者の家へ直接足を運んでお風呂場を見せてもらったり、ユーザーインタビューを重ねたりして、消費者自身も気づいていないような消費者課題を特定していく。その課題に対して、Functional Benefit(機能的便益)とEmotional Benefit(情緒的便益)を切り分けて定義して、どの順番でコミュニケーションしていくか。そのコミュニケーション(マス広告)の投資対効果を、事前の定量調査でどうシミュレーションしていくか、等々。消費財はとっても歴史の長い成熟産業なので、プロダクト勝負というよりも、マーケティング勝負の部分が大きいです。つまり、マーケティングのアイデア次第で売上は大きく伸びる。Lux Super Richとmod’s hairという、当時の市場シェアナンバーワンに君臨していたヘアケアブランドのチームに配属されたのですが、ブランドマネジャーとアシスタント2人、という3人の小さなチームで、年間の広告予算は数十億円、という仕事をしていました。

ユニリーバでの経験は、起業する上で役に立ちましたか?

大企業経験で一番よかったのは、雇われる側、つまり従業員の気持ちが肌で理解できた事です。マネージャーの仕事は、部下の心のコントロール。いかに部下の目線で物事を考えられるかが重要なので、その土台となる「雇われて働く側の人の気持ち」を理解できたのは、すごく良かったです。そういう意味では一度就職してよかったと思っています。毎月決まった日に給料が支払われるとか、有給がもらえるとか、半年くらい血反吐を吐きながら作ったマーケティングプランが上層部の政治的な理由で潰されるとか、会社員として働く人の日々の喜怒哀楽、リスク感覚、目標感覚などを、実体験として知ることができたのは得難い経験でした。

もしも今、当時にタイムスリップして、起業か就職か選べるならどうする?

起業ネタがあるなら、すぐ起業。ネタや自信がないなら、筋が良さそうなスタートアップに新卒入社して1日でも早く経営陣に上り詰める。大企業は・・・入社しないでしょうね。スタートアップで使う筋肉と大企業のそれは違いすぎる。大企業に就職した後に起業ができないということはもちろんないですが、僕があと2年早く起業をしていたら、また別のチャンスがあったかもしれません。起業するのに、早すぎることはないと思います。会社員経験がどんなに長くても、起業したら、経営者1年生になるんですよね。一度くらい大企業で働いてみるのは良い経験になると思っていますが、市場のチャンスが見えているのであれば、絶対にすぐ起業した方がいいです。

20代半ばで再び起業。はじめは自分で汚いコードを書いた

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サイタ自体はどういう着想から生まれているのか?

起業家には、事業コンセプトありきの起業家と、儲かるならなんでもやるぜ的商売人の2パターンがあるじゃないですか。これは良い悪いの問題ではなくて起業スタイルの話ですが、20代の頃の僕はどちらかというと前者のコンセプト型でした。良く言えばビジョンドリブン、悪く言えば市場感覚欠如。

やりたかったのは、知識や経験がぐいぐい流動性を持つプラットフォームのようなものが作れたらすごいな、というのが一番最初の着想です。とはいえ、Q&Aサイトを作ってもなーとか、知識や経験もロングテールしてるよね?とか、あーだこーだ考えながら作りました。

最初の開発はどうしたんですか?

エンジニアがチームにいなかったので、最初のプロトタイプ開発は全部自分でやりました。特にプログラミングができる訳ではなかったのですが、ごく簡単なコンバージョンフォームをPHPで書いて、月間100万円程の売上がたつところまでは、開発と運用は自分でやっていました。後から入社したCTOに「有安さんはプログラマーじゃないから当然コードは汚いんだけど、何でも自分で学んでローンチしようとする情熱が素晴らしい。」とお褒めの言葉をいただきましたが、案の定、僕が書いたソースコードは一瞬で捨てられました(笑)。

起業した頃は、どんな経営スタイルでしたか?

起業家というよりも、何かを実験的に作っている人、みたいな感覚を持っていました。当時はVCもエンジェルも全然いなかったし、IVSやB Dash Campのようなイベントもなかったので、とにかく知識に乏しく、IPOってなんだろう?事業売却ってどんな感じ?と、とにかく将来イメージもロールモデルも何もかもありませんでした。目の前の事業のことだけ、毎日見ていた感じです。

今、活躍している若い起業家から見れば、 相当のんびり楽しくやってたのが最初の2、3年だったなぁ、と今振り返ると思います。当時の僕は、事業プロデューサーの役割しかこなしてなく、経営者の目線で逆算をしていなかった。起業して数年経って、このままではダメだということが少しずつ分かってきて、2011年頃からは経営者モードへギアを入れ直しました。

PMFという考え方との出会いがターニングポイント

創業からExitまでの流れの中で、一番の学びは何でしたか?

あらゆることが失敗の連続でしたが、強いて言うならPMF(Product Market Fit)という考え方との出会いが、ターニングポイントでした。Eric Riesが青い本「リーン・スタートアップ」を出すよりも数年前の話です。どうすればユーザーに刺さる打ち手を導き出せるのか?どうしたら無駄な打ち手を減らせるのか?と、正に暗中模索という感じで、日々、七転八倒していました。

例えば、サイタの初期の話ですが、起業した自分はとても気合いが入っていて、当然前のめりでした。その想いに共感して集まってくれたメンバーもまた熱く、サービスのバリュープロポジションの打ち出し方が、「マンツーマンだから、メキメキ上達する!」とか、「あなたの目標に一直線!」とか、それ自体がとにかく熱い方向になっちゃっていて、うまく行きませんでした。作り手の思いが先行しちゃって、消費者を置いてけぼりにしちゃっているという典型でした。

そこで、ユニリーバ時代に学んだことを思い出して、誘導尋問しないように気をつけながら正しいユーザーインタビューを重ねて、何人目かですぐに気付いたのが「俺、外しているじゃん・・・。」と。そもそも、習い事という商材のメインユーザーは、社会人女性が中心。ユーザーが求めているのは、「まず、楽しむ」ことで、一義的に楽しいことがすごく大事。楽しいから持続するし、楽しいからもっと頑張ろうと思える。「目標に一直線」なんて松岡修造的な暑苦しいバリュープロポジションは超寝ぼけていて、習い事をしたい人の中で、そもそも、目標を具体的に言語化している人は少数でした。まず、楽しさに気付かせてあげる、楽しみ方を教えてあげることが重要で、何度かレッスンを受講していくうちに先生が一緒に目標を作っていくという流れの方が自然。その気付きを得て以来、サービスをとにかくライトに消費できる方へ寄せていきました。これは一例に過ぎないのですが、自分が的外れなことをやっていることに気付いて愕然とする、という悲しい事は何度もありました。

そういう点では、投資を受けたい起業家にPMFの部分で軌道修正したりとかアドバイスをすることもありますか?

はい。創業間もない頃は、PMFの議論をすることが多いです。Y Combinatorでも散々言われていることですが、「誰も欲しがらないものを作っていないか?」「市場があまりにもニッチ過ぎないか?」「それインスタ(or Google or カカクコム)でいいよね?」といった感じで、そのプロダクトをユーザーが必要とする必然性、接触メディアは何か、というところは、よくディスカッションします。しかしながら、相手の事業やプロダクト愛が強いと、一生懸命説明しても全く話が噛み合わない事が多く、大体の場合通じません。

「ラーメン屋」に例えると、よく伝わる

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どうやって起業家にPMFの考え方を理解してもらうんですか?

よくやるのは、ラーメン屋に例えることです。例えば、機能をもりもりに複雑に実装した初期プロダクトを作ろうとしている起業家には、「いま初めてラーメン屋を開業しようとしてるわけだけど、冷やし中華とカレーと蕎麦を一気にまとめてリリースしようとしてるようなもんだよ。まず、ラーメンだけに絞って美味しいのを作ろうよ。とか言います。そこで納得してもらえたら、「行列ができる美味しいラーメンを作る上で、要素をスープと麺に因数分解して、何をどの順番で仮説検証していったら美味しいラーメンになるかを考えようよ。」と話したりします。

また、地理的制約がある事業なのにいきなり全国展開しようとしてるとか、新しいUXを含むサービスなのに最初から幅広い商品ラインナップにしようとしてるような場合にも、「まず、ラーメン屋の1号店をちゃんと美味しい繁盛店にしてから、全国チェーン展開しようぜ。」と話したりします。

あとは、Web以外の他業種で長く仕事をしてきた30代、40代の人が、工数を何ヶ月もかけていきなり大掛かりなプロダクトを作ろうとしている場合には、その情熱や野心はリスペクトしつつ、「生まれて初めてラーメン屋をオープンするのに、いきなり大型店舗で銀座の一等地で勝負しようとしている。まずは、郊外の小さな路面店とか、屋台からはじめるとか、小さなプロダクトから事業の手触り感を身につけていこうよ」という話をします。

確かに、「ラーメン屋」わかりやすいですね(笑

そうなんです。ラーメン屋はユーザーとしてみんな利用したことがあるサービスなので、若い起業家にもよく伝わるんです。とはいっても、考えが凝り固まっている起業家の頑固さは、事業愛と表裏一体の場合が多いので、それはそれで大切にするべき主張だと思っています。セオリーやフレームワークをふりかざして、「それだと、うまくいかないよ」とバッサリ切るのは、誰でもできる非常に簡単なことなので、それだけはやらないようにしています。

自分の若い頃に比べたら今は良い時代だなと思いますし、本当に優秀な起業家が多いと思う。なので、僕が特に気をつけている事は、自分よりもずっと優れた起業家へ成長しそうだな〜と思う人のブレーキになるようなことだけは絶対に言わないようにしよう、というのは心がけています。ラーメン屋の例え話は、あくまで例え話として提示して「どう思う?」と結ぶので、その解釈の仕方は最終的には起業家に委ねることになります。「あなたのプロダクトは、ユーザー価値が小さすぎる」とダイレクトに言うよりも、起業家の気づきを引き出しやすい話法だな、あと、この話してるとラーメン食べたくなるな。と感じています。

投資基準は、2種類ある

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投資活動のゴールとして何か設定していますか?

ゴールは、特にまだ決めていません。エンジェル投資をする自分なりの理由は、いくつかあります。まず一番大きいのは、新しい仕組みを作ってその結果を見たいという感情です。社会的に何か大きなインパクトを与える新しい試みやチャレンジをやりたくて、それがたまたま自分が経営者ではなくて投資家という立場で関わっている、そんなイメージです。

あとは、もっと短期的な期待として、その領域をより詳しく自分が学習したいから、というのもあります。例えば、B向けの産業財でバーチカルのマーケットプレースを作ろうとしているだとか、全く知見のない領域だと、話を聞いてるだけで「その市場は、そういうメカニズムになっているのか!」と興奮してきます。そういう場合は、起業家にその領域の知見や人脈が既にある場合が多く、スタートアップの一般論としてのPMF検証や組織づくりや資金調達のフレームワークを僕から提供する感じの役割分担になります。

一社あたり、いくらくらいを投資するんですか?

500万円〜5000万円のレンジです。大きく分けて、2つ、自分の中に投資ファンドがあるような気持ちでやっています。一つはシード投資ファンド、もう一つはシリーズAファンドです。これは、アフリカに一緒に視察にいったりする親しい友人の、独立系VCファンドを運営する佐俣アンリ氏に投資方針について相談したら、鋭く指摘された点で、使い勝手が良い考え方なのでそれ以来ずっと使っています。大雑把に表現すると、投資判断の際に「人」を見るのがシード投資、「事業」を見るのがシリーズA投資です。

シード投資で「人を見る」とはどういうことですか?

まず、大前提として、市場選択で9割がた成否が決まると考えます。どんな優秀なチームで潤沢な資金があっても、市場選択の筋が悪いと厳しい。市場選択が合理的で、タイミングが良く、創業者が優秀であれば、何度か方向転換したとしても、最後には必ず成功するだろう。これが、シード投資の期待値です。最大でも数億円台前半でのバリュエーションで投資実行をすることが多いです。

「人を見る」とは、優秀かどうか、というよりも粘り強く情熱を事業へ注ぎ続けることができるかどうか、という点です。経験則的に、いわゆる「優秀」でなくとも、起業のハードシングスをくぐり抜けて事業が伸びていけば、経営陣はいつの間にか凄みが毛穴からにじみ出てくるものだと思います。特に20代前半の社長など、若い人の成長率は目を見張るものがありますよね。シード投資のミーティングは、ダメ出しというよりも、事業を伸ばす打ち手についての、ブレインストーミングのような感じになります。「インスタ含めて、広告のアクセルめいいっぱい踏んだら、月どれくらいユーザ獲得できるかな?」「全く同じことをアジアで展開するとしたら何ヶ月でいけそう?」という感じの問いかけで、アイデアをたくさん出す発散的な会議になります。

では、シリーズA投資は、どのような点を重要視していますか?

シリーズAでは、事業KPI、ユニットエコノミクスの妥当性を見ます。バリュエーションで10億円以上のことが多いので、投資としてのリスクリターンが見合うのかどうか、を数字で検証していきます。

少し前と比較して、バリュエーションがかなり高くなっている今の日本の状況は、日本全体のスタートアップエコシステムとしては大雑把な総論としては、良いことだと思っています。国家全体としてみたら、スタートアップ資金の供給不足よりも、ずっとマシです。なので、自分が投資出来ない場合でも、起業家にはなるべく早めに「高すぎて、無理です!」と伝えますし、「XX億円のバリューだったら出せたと思う」というように、なるべく自分の基準を明確に伝えてあげるようにしています。

例えば、プロトタイプしかなくて、売上もゼロなので1〜2億円くらいのバリュエーションが妥当だと思うけど、でも起業家は「Pre6億円で集めたいと思っています!」と言っていて、すでに他の投資家も何社か投資を決めていて「ぐげげ、まじかよ」というケースもよく目にします。そういう時は、これだけ資金がジャブついている日本で、起業家側としてスタートアップをやれているのはタイミング的にチャンスだから、僕がXXさんの立場にあったとしてもその高めのバリューで調達しちゃうと思う、といった話をしたりします。そこまで具体的に言ってあげた方が相手のためにもなりますし、お互いに気持ちがいいかなと思うので。お互いに、スポーツとして。

その時も、ラーメン屋に例えます。「チャーシュー1枚の普通のラーメンが3,600円で売られていて、店先には投資家というお客さん達が4人、5人と並んでいる。それだけ相場が高いのであれば、起業家にとってはチャンス。でも、それは永遠には続かないよ。」といった感じです。

会う前に、チャットで議論する

なぜ、直接会う前にまずテキストチャットでやりとりするんですか?

正直に言ってしまうと、初対面の起業家とのミーティングって、数が増えるとすごく疲労するんです。採用面接を連続で5人とかやったことがある人はわかるかもしれませんが、あの感じとすごく似ています。起業家は、人生をかけた勝負の相談をしに来てくれているわけなので、話を聞くこちらも気を抜けない、真剣勝負のミーティングになります。なので、非常にくたびれる。以前は一日に5社、6社と会っていましたが、今は初対面の起業家と会うのは一日3名以下におさえるようにしています。

ということで、最近はできる限り会う前にチャットベースで話をするようにしています。Tokyo Founders Fundでシリコンバレーでも投資をしているし、日本でも地方からの相談がよく来るので、そうした地理的な制約を受けないためというのもあります。まずは、どんな感じなのかを、フランクにチャットで雑談するようにしています。

今はTwitterのDMか、Facebookのメッセンジャー経由で月に20〜30社ほどから事業計画書やプロトタイプのモック付きで、連絡が来ます。その中から、出資を決めるのは月に1〜2社ほどです。

具体的にはチャット上でどういったやりとりをされるのですか?

チャットでのやりとりの中身は、対面の議論とほとんど同じです。「なんで、この領域選んだんですか?」とか「今一番何について時間使ってますか?」「いま、検証しようとしている事業の仮説はなんですか」などです。アドバイスやディスカッションも、テキストチャットで十分議論が出来ますし、ログにも残るので便利です。

具体的には、僕が経営者だったらこういう視点で考えますという話を、ふんわり議論じゃなくて超具体的かつ超リアルな、明日からすぐ使えて行動が変わるような議論をチャットでするようにしています。例えば、将来的にこういうユーザー獲得の競争になるから、僕が経営者だったらこういう資金調達の仕方をすると思うんですけどどうですか?とかそういう超具体的な話です。もっと言えば、僕だったらこういうLPを作って、こういう広告を打ってみるけど、どうですか?とか具体的な話をします。

起業家は、どんな議論を投資家とすべきだと思いますか?

そもそも、シード段階では、投資家と議論しちゃいけないと思います。プロダクトを作る時間、ユーザーと会話する時間にほぼすべての時間を費やしたほうがいいと思います。投資家と会ってミーティングをすると、話を聞いてもらえて承認欲求を満たされるし、悩みも言語化できて勉強になるし、で気持ちよくなってしまうのですが、その誘惑に負けてはダメ。

プロダクトやユーザーに向かい続ける方が絶対に正しいし、そこに多くの時間を割いた方が成功確率は少しずつジリジリと上がっていくと思います。そういう意味で、投資家よりもターゲットユーザーと話す時間の方が圧倒的に大事だと考えています。最近は「エンジェルやVCまわりをしていて、XX人に会いました!来週もXXさんと会います!」みたいなノリの人は時々いますが、時間の使い方的に、「もったいないことしてるな〜」と思います。

市場選択のセンスは磨くことができるはず

いい「市場選択」って、どういうものですか?

市場選択って難しいですよね。僕の元ボスの穐田さん(元クックパッド社長)とも散々話したんですが、本当に難しいなと思います。

たくさんの起業家とミーティングしてきた経験則的に言えば、市場選択に関しては、自身のバックボーンに基づく市場選択がたまたま伸びる市場だったというパターンが最初は多いのではないでしょうか。例えば、実家が卸をやっていて、その流通経路に関して問題意識を持っていて、それをこういう風に解決したい、と思って深掘りしていたら、とても良い収益ポイントを見つけた、みたいな。何かしらの自分オリジナルの動機、主観的なパッションが明確にある事は素晴らしいことですが、それだけだと成功の十分条件ではなく、その個人的な情熱と市場のチャンスの2つが、ベン図上で重なっている部分があると、事業として成立するんだと思います。

個人的に市場選択で一番いいと思うのは、困っている人が多くて、エレガントな解決法があり、かつその事実にまだ誰も気づいていない、みたいな市場です。国内市場だけだと、日本は人口がこれから猛烈な勢いで減っていくので、消去法的ですが、例えばニュースで見かけるような、年金が構造的に破綻していて将来に対して不安を抱える人が増えているとか、明らかな社会の大きな負は、それ自体がIssueで、確実に困る人が大勢いて、その問題をどう解決していくか、どう助けていくか、というようなミッションが明確な事業が、個人的には好きです。社会の大きな問題を、事業で解決するというチャレンジにワクワクします。

新規性よりも、消費者の問題を解決できるか

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そもそも、その問題に困ってる人はそんなに多くないとか、僕らのようなWebビジネスではなく、既存のリアル店舗の人達が十分解決できるのではないか、といったケースや議論はよくあります。

困っている人が多い市場でなくとも、テクノロジーでユーザ価値やコスト構造などに発明の余地があるものだと良いですね。ゲームのルールを変えることができる。市場さえ大きければ、その中の部分的なセグメントだけでも独占したら十分な収益性を生む。ただ、発明しないといけない事業って、基本的にはとても大変だと思います。実際のところ、今の日本は、起業家やスタートアップがまだそこまで多くないから、特定の発明とまではいかなくても、既存のやり方よりも良いビジネスプロセスを作って、問題解決ができるパターンが一番いいとは思います。

「新しいもの作らないといけない」という呪いにかかっていたのは昔の僕でしたが、そういう人はたまーに、若い起業家の中にいる気がします。

みんなゼロイチの発明にこだわりたい気持ちはよく分かるけど、新規性は別に問題じゃない。ポイントは常に、消費者の問題を解決できているかという一点です。ユーザーは新しいものを求めているのではなく、より良いものを求めているだけだと思うので。なので、愚直にユーザーの問題や認知にフォーカスして、寄せていくということが大事だと思います。

市場選択の能力は、磨くことができるものですか?

センスがいい人と議論を重ねると、磨かれると思います。最近感じるのは、経営センスがある人と市場選択センスがある人は別だな、ということです。

エグゼキューションがとにかくうまいとか組織コントロールができる、プランニングができるとかは経営センス。 市場選択センスは、これ儲かるなとか、ユーザーに絶対刺さるなといった嗅覚のようなもの。ちなみに、創業した頃の自分を振り返ってみると、見事に両方とも持っていなかったな〜と思います。けど、自分なりに少しずつ磨いていきました。特に市場選択の方は、エンジェル投資を真剣にやるようになって、たくさんのスタートアップ起業家と議論を重ねてきて、多少はマシになってきたように感じています。

市場選択スキルを持つ人はなかなかいません。ただ、それを外していたとしても、センスがあって嗅覚が鋭い人や投資家とディスカッションをしていたら、徐々に修正されて磨かれていく部分はあるので、ある意味トレーナーブルなスキルだと思います。

一方で経営センスの方も、「君は、全然人や従業員の気持ちに立って考えられていないよ」とか、「ビジョンを語る事が全然できていないよ」など、しっかり指摘をしてくれる人がいれば、多分伸びていくものです。

両方持っているのがベストですが、最初からなんでも出来る人はいない、はじめは誰でも初心者だし、そもそも自分も昔全然ダメダメでした。なので、起業家が気をつけるべきは、自分の伸びしろを伸ばそうとする努力をすること、アドバイスを聞き入れる柔軟性をもつこと、といった性格や学習力のような部分ですね。

投資先のCFOとして資本政策を作り、自らVCにも足を運ぶ

有安さんは以前から「投資家を手駒として使い倒せ」と言っていますが、具体的に使い倒している事例を教えてくれますか?

実は、前提として「俺を使え」とはあまり言いません。ここに困っているだろうと、こちらから問題を拾いには行かず、本当に困っている時に相手が助けを求めてきたタイミングで助けてあげる。もちろん日頃から言いたい事はたくさんありますが、そこは我慢をするようにしています。誰が映画監督なのか、誰がその事業という映画を撮るのか、という事は念頭に置いています。

ただ、経営陣から求められた場合に限っては、週に一回とか月に一回とかの頻度で、一回1~2時間程度のミーティングしているスタートアップは何社かあります。一緒に具体的な打ち手の優先順位付けや資金調達プランを作ったりもします。「おし、XX月にシリーズA調達やろう!」と決まった会社なんかは、週4くらいでミーティングを重ねてパートタイムのCFO的な業務をやっていたこともありました。IPOまでの資本政策づくり、目標調達額の設定、VC候補のリストアップとアポとり、VCミーティング同行、契約書レビュー、と一通りサポートしました。そういった支援ができた事は、僕自身の自信にもなったし、割と大変だったのでやり甲斐がありました。

起業家の覚悟を引き出す「壁打ち」が価値

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VCもエンジェルも、起業家から選ばれる立場になってくると思いますが、有安さんの場合、どこが選ばれる魅力になるのでしょうか?

壁打ち相手、良質のディスカッションパートナーになることが僕の価値だと思っています。プロダクトの設計とか、勝ち筋づくりで高度な抽象思考が必要な場面って、一人でウンウン唸って考えるの、すごく難しいじゃないですか。自分の場合は創業時、エンジェル投資家とかメンターみたいな壁打ち相手もいなくて、毎週末の土日に5時間とかカフェにこもって、あらゆる課題をノートに書きなぐって、そのノートは数十冊になりました。当時は、それ以外に自分の考えを整理して実行計画に落とし込む手段がありませんでしたが、今、冷静に振り返れば、「どんだけ、だらだら時間をかけて考えてたんだよ・・・」と思います。その時に優れた壁打ち相手がいれば、「それは、今は考えなくて良い論点だと思うよ」とか「その議論の前提って、本当?」みたいな投げかけをもらうことで、1/20ぐらいの時間に削減できたのではないかと思います。そういう意味でエンジェルとの壁打ちは、起業家にとってすごく時間を節約できる、経営のショートカットだと思います。あと、一人で起業した人の場合は、スタートアップ特有の暗中模索感、心細さが多少軽減されるという、地味だけど大事な点もあります。

壁打ちというのは、コーチングみたいな感じですね

起業家の行動ロジックは、つきつめれば、思考の整理と覚悟さえできれば、あとは行動あるのみだと思うので、その整理と覚悟を準備するリードタイムを最小化するべく、壁打ちという名の雑談を提供するのが、エンジェル投資家としての自分の主な仕事です。プロトタイプ作りのTIPSとか、採用や組織管理のノウハウを伝えるのももちろん価値がありますが、単にHowToを伝えるよりも、良い壁打ちをする方が価値が大きいと感じてます。

なので、質問をたくさん投げるようにしています。 「10倍の打ち手と1.5倍の打ち手があるとしたら、今はどちらをやるべき?」とか、「このままいったとして、2年後、本当にどうするの?」とか「仮に資金調達がうまくいって、手元に5億あったら何をやる?」とか、そういう具体的な質問を緩急をつけて、投げかけていきます。

僕は、人に何か複雑なことを教えること、理解を引き出すことが割と好きで、コーチとして向いてる性格だと思っています。投資家にも色んなタイプがいますが、スタートアップにとって良い初期投資家とはどんな人か、で言うと、僕は「良い質問を投げかける人」だと思っています。

成功する起業家の共通点。日本は起業家天国

今現在、何社ぐらい投資しているんですか?

今はざっくりと40社くらい。Tokyo Founders Fundも含めてなので、個人でいうと20社ぐらいです。これは決して多くなく、20件くらいコンタクトをもらって、1〜2社くらい投資するという割合です。資金をばらまくというよりも、少数精鋭でしっかりお手伝いしたいという気持ちが最近は特に強くなってきました。

有安さんのように、既に投資先がExitしているエンジェルは国内では珍しいと思いますが、成功する起業家の成功条件、共通点などはありますか?

市場選択が間違っていないこと、プロダクトが間違っていたとしてもすぐにアジャストできるチームであること、です。マネーフォワードも、市場領域として明らかに正しいし、チームも大変優秀だったので、投資に際して全く心配はありませんでした。僕が投資した社員数名の段階だと、開発していたプロダクトは「マネーブック」というプロダクトで、今の製品群とはかけ離れたプロダクトでした。しかしすぐに間違いに気づき、その後に出したのが、家計簿アプリです。

日本は競争が激しくないので、シリコンバレーに比べると起業家天国だと思うんですよね。中国とかシリコンバレーを見ていると、いいモデルでPMFが達成されると、すぐに競合が何社も現れる。大企業も資金投じて潰しにかかってくる。日本でも、一時期のフリマアプリや、最近で言うと暗号通貨の取引所などの領域は、一時的に「混んでいる」感じもしますが、もう少し社会全体を見渡してみて、特定業種のバーチカルSaaSとか、まだまだ競合が少ない上に業界内の無駄が強く、アップサイドが見込める領域が日本にはまだまだ残っていると思います。そうした部分をちゃんと選べていればうまくいくと思うんですよね。

投資家か起業家かはどうでもいい。自分の思想に没頭しろ

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業界でも投資家、経営者として一流なポスト穐田さんを目指しているように思えますが、有安さんから見て穐田さんとの差分は?

それは初めて言われました(笑)。確かに、2年半ほど一緒に仕事させていただいて、自分との差分はと言うと、、、差分だらけというか、ほぼ全て差分というか。凄い人ですよ。プロダクトに関する細かい議論がユーザー目線でできる一方で、上場企業ならではの大胆な資金調達をしかけたりと、経験豊かで大変器用、かつ大胆で資本家としての胆力のある方だと思っています。

穐田さんを見ていて、僕が勝手に安心しているのは、彼が、投資と経営の両方で大きな成果を出していることです。僕がエンジェル投資を真剣にやりはじめた頃、「有安、投資家になっちゃうのか〜・・・。」と、もう一線を退いちゃうんだね、リスクとって勝負しないんだね、といったニュアンスのことを、まわりの仲の良い友だちに言われました。でも、自分としてはまだまだ若いし、引退ムードでは全くなく、引き続き面白いことがあればどんどんチャレンジしたい気満々でした。今も当然そうです。エンジェル投資を正当化するキレイ事ではなく、本気でそう思ってるのですが、自分が経営者としてベストだったら自分が経営すればいいし、自分よりも適した人が目の前にいてやる気ならば、その人が経営すればいいと思うんですよね。エコシステム全体から見ても、役割分担としてその方が絶対良い。自分が株式の大半を握っていないとイヤだ、自分が経営しないと全然面白くない、というこだわりは、今のところ持ってないです。

では、このまま「プロ」エンジェル投資家として投資し続けるんですか?

投資家ではなく、起業家としてまた勝負したいな、とは思っていますが、焦りは不思議とありません。2017年は、全力でエンジェル投資をした一年間でした。個人投資家としては初となるAWSとの提携プログラムを開始したり、シリーズAのVC行脚を一緒にまわってパートタイムCFO的な役割をやってみたり、と「自分が起業家だったら、何をして欲しいだろうか」を日々考えて、思いつくままにアクションをしてきました。エンジェル投資活動について、もう少し試してみたい仮説がいくつかあるので、それをやり終えたら、一通り満足するんじゃないかって思っています。自分の場合、とにかくビギナーズラックなのですが、エンジェル投資の1社目がマネーフォワード社で東証マザーズに上場し、投資額の100倍を大きく超えるリターンが出ました。そういった意味でも、シード期での投資からExitまで、投資家の立場をしっかり経験できた一年でした。シリコンバレーの伝説的なエンジェル投資家のお歴々の記事を見ると、「エンジェル投資をやりきった」なんて口が裂けても言えないですが、表面的なレイヤーで一通り経験することはできたことは幸運だったなと思っています。

次、何をやるんですか?

「起業して、グローバルに大成功する事業を作らないと、起業家としての自分が生きてる価値はない!」みたいな、若い強迫観念に突き動かされて起業するのは、自分のスタイルにあわないというか、そんなに根性がある方でもないので、自分らしい精神状態で、とるべきリスクをしっかりとって勝負できるといいなーって思っています。

僕は、スポーツ選手や芸術家に強い憧れがあります。野球のイチロー選手や、バスケの田臥選手のインタビュー映像をみると背筋が伸びて胸が熱くなるのですが、それは、何か一つのことを選び取り、そこに人生を賭けている人だけが出すオーラに、圧倒されるから。

そういう風に、何か一つのことに没頭する生き方は美しい。自分もそうありたい。没頭できる事を見つけられた人は強いし、純粋だし、周りからの評判、外野の意見は気にならなくなりますよね。それこそ、自分が投資家と経営者のどちらであるかとか、もうどうでもよくなると思うんです。そういう、時間の流れ方が歪むような、ググっと何かに没頭できる何かが見つかる仕組みを作りたくて、プライベートコーチが見つかるサイトの「サイタ」を作りました。プライベートに頼れる先生、メンターが見つかると、没頭できる対象が見つかりやすいからです。

今思えば、学生の時に起業したアップステアーズで金子さんに声をかけてもらって、すぐに意気投合したのも、「勝負をしたい人が、事業づくりだけに集中できる起業環境をつくろう」というコンセプトでした。10年以上前のことですが、僕個人のやりたいこと、価値観、思想的な部分は根っこでは大きく変わっていないんだな、と最近気づきました。

それで言うと、有安さん自身の思想とは何ですか?

「没頭すること」そして「人生のインパクトを最大化すること」ですね。

人生という限られた時間の中で、社会へのインパクトをいかに大きくできるか、という事だけ考えていくと、色々なノイズに惑わされずに純粋な気持ちで事業に向かえるんじゃないかと思っています。人生は短いので、人の価値観の中で生きるよりも、自分の価値観の中で生きたほうがいい。少し時間にゆとりがもてるようになって、そう考えることが増えました。

最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします