初めての資金調達ガイド 【後編:長所と落とし穴】
前編では、資金調達の種類と特徴について紹介しました。
目次
自己資金:必要資金が少なく、家族の支援が豊富な場合におすすめ
- Apple
借入金:事業規模が中程度で、信用力や担保がある場合におすすめ
- Starbucks
- アンダーアーマー
出資金:市場規模が大きく、高い成長性や収益性が見込まれる場合におすすめ
- Uber
- Airbnb
自己資金
自己資金とは、自分や家族、友人などから調達する資金のことです。
自己資金のメリットは、返済義務や利息負担がなく、経営権や自由度も失わないことです。 自分のペースで事業を進められるという点では、最も理想的な資金調達方法と言えるでしょう。
一方、自己資金のデメリットは、調達額が限られることです。
自分の貯蓄や周囲の支援だけでは、事業の規模を拡大するのが難しい場合があります。 また、自己資金で事業を始める場合は、リスクを自分で負うことになります。 事業が失敗した場合は、自分や家族、友人の財産や信頼関係に影響が出る可能性があります。
自己資金で事業を始める場合は、事業を始める際に必要な金額が少なく、自信がある場合におすすめです。 また、自身の事業を応援してくれる友人や家族、そして充分な貯蓄がある場合も自己資金で事業を始めることが有利です。
自己資金で事業を始めた有名な例としては、AppleやFacebookが挙げられます。
Apple
1971年、16歳になったジョブズは友人の紹介で、後にAppleの共同創業者となるスティーブ・ウォズニアックと出会い、すぐに意気投合します。
2人はウォズニアックに母親から「エスクァイア」という雑誌をもらい、そこに載っていた不正に無料で長距離電話ができる装置を自作してしまいます。この装置は、銃で脅されて装置を奪われたため2人は装置を売ることをやめてしまいましたが、この経験がAppleの起源と言われています。
その後、1976年に運転資金として、ジョブズはフォルクスワーゲンのミニバスを売り、ウォズニアックはプログラム可能な電卓を売ることによってガレージにオフィスを構えながら、今や世界で最も有名な企業となるAppleの歴史は始まりました。
Facebookは2004年にマーク・ザッカーバーグがハーバード大学の寮で友人たちと開発したソーシャルネットワークサイトで、彼は、友人であり共同代表でもあるエドゥアルド・サヴェリンの資金援助を受けて、趣味のプロジェクトの1つとして運営しました。
当初はハーバード大学の学生に限定していましたが、その後、マークはボストン地域の他の大学にも会員を広げました。その後、徐々にカナダやアメリカのほとんどの大学に広がっていった後にPayPalの創業者の1人であるピーター・ティールから出資を受け、事業の拡大を進めていきました。
借入金
借入金とは、銀行や金融機関から借りる資金のことです。
借入金のメリットは、経営権や自由度を維持できることです。 返済義務や利息負担はありますが、借りたお金は自分の好きなように使えます。 また、借入金は比較的早く調達できる場合もあります。
一方、借入金のデメリットは、返済義務や利息負担が重くなることです。 事業がうまくいかない場合は、返済能力が低下し、借入金が増える悪循環に陥る可能性があります。 また、借入金をするためには信用力や担保が必要です。 新規事業や未確立事業では信用力が低く、担保もない場合が多いため、借入金をすることが難しい場合もあります。
借入金で事業を始める場合は、事業の規模が中程度で信用力や担保がある場合におすすめです。 また、返済計画や利息負担に余裕がある場合や、経営権や自由度を維持したい場合も借入金で事業を始めることが有利です。
借入金で事業を始めた有名な例としては、Starbucksやアンダーアーマーが挙げられます。
Starbucks
コーヒー飲料、コーヒー豆、食品、飲料を小売店で販売するだけでなく、他の店舗に卸売る多国籍企業として知られる彼らの旅は、小さな店舗から始まりました。
当時のアメリカ人のコーヒー愛飲者は、安価な低品質のコーヒーを日常的に楽しんでいましたが、創設者であるジェリー・ボールドウィン、ゴードン・バウカー、ゼブ・シーグルの3人は、高品質のコーヒーにこだわり続け、コーヒーに対する一般の認識を大きく変えることに情熱を注ぐ決意をし、Starbucksが1971年に誕生しました。
創設者たちは、最初の店舗を賃料が137.50ドルであるシアトルのウェスタンアベニュー2000番地に決め、創業資金として各パートナーは1,500ドルを出資し、銀行融資で5,000ドルを調達したことで彼らの物語が始まりました。
アンダーアーマー
CEOであるケビン・プランクは、1996年にサッカー選手のための最高のTシャツを作ることにを目的に企業をしましたが、創業して間もなく困難に陥りました。
当時、メリーランド大学フットボールチームの元キャプテンだった23歳のプランクは、コンサートでTシャツを売って2万ドルほど貯めたことがあり、そのお金を元にし、5枚のカードで4万ドルもの借金を背負ってビジネスをスタートさせていきました。
かなり多くの資金を集めてプランクは事業を始めましたが、在庫を抱えなければいけないビジネスモデルという事もあり一時は倒産寸前にまで追い込まれていきました。
そんな中、国内最古の女性経営銀行であるワシントンのアダムズ・ナショナル銀行との官民パートナーシップの一環として、最終的にSBAから25万ドルの融資を受けることができ、倒産を回避することができ、世界有数のスポーツウェアブランドとして長い道のりを歩み始めました。
出資金
出資金とは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから調達する資金のことです。
出資金のメリットは、大きな資金を調達できることです。 返済義務や利息負担はありませんが、出資者は自分の出したお金に見合ったリターンを期待します。 出資者は事業に関する知識やネットワークを持っている場合が多く、事業の成長や収益化に役立つアドバイスやサポートを提供してくれる場合もあります。
一方、出資金のデメリットは、経営権や自由度を失うことです。 出資者は自分の出したお金に対する権利や影響力を求めます。 そのため、出資者に株式や役員のポストを譲る必要がある場合があります。 また、出資者からは事業の進捗や成果に関する期待や報告を求められます。 出資者との意見や方針が合わない場合は、コミュニケーションや調整が難しくなる可能性があります。
出資金で事業を始める場合は、事業の規模が大きく、高い成長性や収益性が見込まれる場合におすすめです。 また、大きな資金が必要な場合や、出資者からのアドバイスやサポートが欲しい場合も、出資金で事業を始めることが有利です。
出資金で事業を始めた有名な例としては、UberやAirbnbが挙げられます。
Uber
Uberは創業者がパリで行われたビジネスカンファレンスにて、悪天候によってタクシーを手配することができなかった経験をもとに、路上でタクシーをつかまえ難いというアメリカの交通事情からサンフランシスコで立ち上げをしました。
タクシーを連想させるために、当初の名前はUberCabと名付けられており、システム開発に莫大なお金が必要であることを予測していた創業者らは、ビジネスの構想から約5ヶ月後にFirst Round Capital から 20万ドルのシード資金調達を完了し、サービスのリリースを翌年行うことができました。
順調に進んでいるように見えましたが、Uber「Cab」という名前からカリフォルニア公共事業委員会にサービス停止を要求され、タクシーサービスではない事を位置付けるために、現在のUberという名前に落ち着き、世界で最も使われる配車サービスへと成長していきました。
Airbnb
Airbnbは2008年に自宅の一階で寝床とするエアマットレスを貸し、朝食を提供するサービスとして始まりました。このビジネスモデルから、創業当初の名前を「AirBed&Breakfast」とし、バラク・オバマが正式に大統領に指名された 2008 年の民主党全国大会に焦点を当てて、候補者に売上の一部が還元されるスキームを用いたシリアルを販売し、サービスの拡大を図るために投資家を探す事に尽力しました。
その当時、シリアルの売上だけではどのVCも出資を決意してくれませんでしたが、創設者たちの「諦めないハングリー精神」と「非常に想像力に富んでいる柔軟性」という理由でY Combinatorから2万ドルを出資してもらい、その5ヶ月後にY Combinatorが主催するビジネスイベントにて、名前を「Air Bed & Breakfast」から「Airbnb」に変えてピッチを行ったところ、新たに60万ドルを獲得し、ホテル業界に激震を与える企業へと成り上がっていきました。
おわりに
以上で、資金調達の種類とメリット・デメリット、おすすめの方法について紹介しました。 資金調達は起業家にとって重要なステップですが、種類や方法によってメリット・デメリットが異なります。 自社の事業モデルや目的に応じて、最適な資金調達方法を選択することが重要です。
また、資金調達に成功したからといって安心せず、事業の成長や収益化に努めることが大切です。
資金調達は手段であり目的ではありません。 最終的には事業でしっかりとマネタイズを図ることが目標です!
起業家の皆さんが成功することをAngel Portは心より応援しています!