プロフィール アメリカを代表するエンジェル投資家。Uberの初期投資家であり、それ以外にも、5社のユニコーンにエンジェル投資を実施。シリコンバレーの著名なベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルの「スカウト」メンバーでもあり、人気のYouTube番組 「This Week In Startups」 のホスト。
主なユニコーン投資先は、Uber、Robinhood、Thumbtackなど。日本人起業家、内藤聡氏率いるAnyplaceへの投資も実施している。そして2018年7月には著書「エンジェル投資家」を翻訳出版。

思ったことを、相手を傷つけずに伝えるよう気をつけている

ー著書「エンジェル投資家」でも書かれていましたが、出身地やご両親がご自身の性格・人格形成にどのような影響を与えていますか?

私の性格を表すキーワードは「candid(率直)」だと思いますが、これは生まれ育った環境などで自然と身につきました。 ニューヨークのブルックリンで生まれ育ち、父親は起業家でした。時代的にも場所的にもあまり良い時代ではなく、周りの人と対立することがしょっちゅうでしたね。

みんながお互いに対して非常に率直な物言いをする感じだったので、自分もそのように育ち、ともすれば「ぶっきらぼう」という性格にもなります。

しかし仕事をするようになり、特にエンジェル投資家として活動するようになると、率直すぎてぶっきらぼうな言い回しは必ずしも良い方向に働くわけではないと学び、ある種の「コミュニケーション力」をつける必要がありました。 全ての人が率直な意見や批判にうまく対処できるわけではありませんからね。下手すると、起業家を傷つけてしまったり、まとまりかけていた投資案件が流れてしまいかねません。

もちろん本当のことを伝えるのですが、言い方に気を遣い始めました。 例えば、厳しい意見を言う際にも、いきなりそれを言うのではなく、3回くらい相手のことを褒めてから「もっと良くなるためにアドバイスをするとすれば」といった感じに意見を言うようにしています。 あとは、相手の気持ちを傷つけないように、意見に客観性を持たせたりもするようになりました。「(私がそう思うかどうかは言わずに)VCならもっと良いエンジニアを雇うべきと言うと思うよ」や「VCならそのプロダクトにその単価は安すぎると言うと思うよ」といったように。

グロースマインドセットを持つことが、ホームランの秘訣

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ー今までの投資先でホームラン(大成功)もあれば、ヒット(そこそこの成功)もあると思います。両社を分けるのは何でしょうか?

一般的にはタイミングの重要性が説かれていますが、個人的には「起業家の野望の大きさ」もかなり大事だと思っています。
あまりイメージがつかないかもしれませんが、プロダクトがある程度マーケットに行き渡ると、そこで満足してしまう人が多いんです。小さな成功で止まってしまい、それ以上プッシュしないというか。

例えば、私の投資先で、3人のセールスチームで10万ドルの売上を出している会社があったのですが、追加投資をした際に今後のプランを聞いたら「プロダクトに機能をいくつか足していく」というものでした。 私が「セールスチームを増やしたらどうか」と聞いても「機能を増やすのに時間がかかるので、1年後以降になります」と言われてしまいました。

こういう風に、ある程度売上を出していたら、それ以上伸ばすようなリスクを取ろうとしない起業家もいます。これが、ホームランとヒットを分ける差だと考えています。 3人でそれだけの売上が出ているんなら30人にすればいいし、それが怖ければ少しずつセールスチームを増やしていき、うまくいかなければすぐにレイオフ(解雇)すればいいんです。

グロースマインドセットを持つことが大事です。Facebookがあそこまで大きくなったのも、ベーシックなプロダクトを他の市や国に持って行く方が、機能を足してプロダクトを磨いていくよりも大事だというのを理解していたからだと思います。機能を増やしても既存の顧客を満足させるだけで、ユーザー増加には繋がりにくいですからね。

とにかく、月次5%の成長で満足するのではなく、20%や30%の成長を目指すことが大事です。年次で2倍・3倍になるくらいのグロースマインドセットを持つことが、ホームランの会社や事業を生み出すために大事なことだと思います。

起業家が大変な時に、1番信頼できて相談できる投資家に

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ー著書の中で、エンジェル投資家としてCEOの味方になるのが大事と書かれていました。CEOと関係構築する上で大事にしていることはありますか?

投資をしてもらっている株主の中で「1番頼りになる人」になるような努力をしています。 起業家が何か困った時などに「1番信頼できて、助けてくれる人」として最初に思い浮かぶ人になりたいです。 どういうような助けになるかはその会社次第です。ビジネスモデルかもしれないし、マーケティングかもしれないし、ただの話し相手としてかもしれません。

スタートアップの世界は非常に怖くて、株主に正直に話したらクビにされる可能性があるし、チームに正直に話したら怖がって辞められてしまうかもしれません。起業家は孤独であるというのはこういうことで、正直なことを誰にも話すことができないんです。 そんな時には私が話し相手になるようにしています。投資先の起業家には「スタートアップの色々な場面を経験してきたから、何かあったら連絡してほしい」と常に伝えています。 会社が窮地に陥ることなんて日常茶飯事で、むしろそこが私のスペシャリティ(専門領域)ですから。

起業家が操縦する飛行機が墜落してしまいそうだったら、私は必ず隣の操縦席で副操縦士として無事に地面に着地するように全力を注ぎます。それでもダメなら私も一緒に墜落するという心構えです。 うまくいっている時はみんなにチヤホヤされますが、負けた時は逆にみんなが離れていきます。そのような時にできるだけ彼らのそばにいてあげられるように意識しています。

親子関係みたいなものだと思っています。本当に大事なのは、「お金をどれだけあげるか」でも「おもちゃをどれだけ与えるか」でもなく、「どれだけ多くの時間を共に過ごし、どれだけの信頼関係があるか」です。

基本は負けると理解して、勝ちをいかに大きくできるかが勝負

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ーエンジェル投資家は結果が出るまで10年くらいかかると言われていますが、いい結果が出るために大事にしていることはありますか?

「99%の負けを無視して、いかに1%の勝ちを大きくできるか」というのは非常に大事にしています。
まず、スタートアップ投資は株式投資や不動産投資などとは全く違って、基本的には負けるもので、わずかな可能性で勝った時に全てのリターンが返ってきます。 ですので、投資先ポートフォリオのほとんどがうまくいかずに終わってしまうのはある意味当たり前なんです。

もちろんその失敗から学ぶこともあります。うまくいかなかった会社をリストアップして、それぞれ学んだことをノートにまとめ、それらの創業者には次のアイディアが出たら連絡するようにと絶えずキャッチアップしましょう。
しかし、大事なのはその99%の負けではなく、1%の勝ちの部分です。
1%の勝ちが全ての利益を決めるので、そのシグナルを見逃さず、1%の勝ちをできるだけ大きくできるようにすることが大事です。

ージェイソンさんが考える、エンジェル投資家の醍醐味とは何ですか?

周りのコンセンサスを得る必要がない、ということです。
VCで投資を行う場合、複数人の同意を得た上で投資先を決めなければいけません。しかし、ほとんどの企業が失敗をして、ほんのわずかな確率で成功する企業が出るというのがスタートアップ業界です。

そんな中、複数人の同意を得て投資してもホームランを出すのは難しいと思っています。そうではなく、自分がいいと思ったところに投資しなければいけません。
エンジェル投資はまさにそれができる投資手法だと思っています。

エンジェル投資ほどおもしろい仕事はない

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ーアメリカと比較して、日本にはエンジェル投資家の数が非常に少ないです。どのようにしたらその数を増やせるのでしょうか?

オススメの方法があります。
まずは会社の役員を務めている人などの、お金持ちで少し歳を取っている人を集め「エンジェル投資がこの世で1番おもしろい仕事だ」と説明します。
次に、自分が推している起業家10人を彼らの前に並ばせ、それぞれ「どのように世界を変えたいのか」を話してもらいましょう。その中で気に入った2人ほどに5,000ドルでいいので投資をしてもらいます。
このピッチを毎月行い、彼らの投資件数が30件(投資金額150,000ドルほど)になれば、どこかの会社が大きなリターンとなって返ってくる可能性がありますよね。
もし全ての会社を外したとしても、150,000ドルなんてリッチな人にとってはどうってことない金額であることはもちろん、世界を変えたいと思っている起業家30人、すなわち世界中でトップレベルに面白い人たちと親密になることができます。

成功しても失敗しても、投資する側が得るものが非常に大きいのがエンジェル投資だということを、もっと伝えていくべきです。エンジェル投資ほどおもしろい仕事はありません。

ー最後に、これからの日本のエンジェル投資家に向けてメッセージをお願いします